コメント2(2020年4月18日)

4月9日付の質問に対する佐藤氏の回答について

  私達は、佐藤氏が公開している新型コロナウイルスの感染拡大に関するシミュレーション予測の科学的な問題点について、個人的にそのことを伝え、必要と思われる修正等を求めてきましたが、対応して頂けなかったため4月9日に質問状を公開しました。

その後、佐藤氏から「公開質問状に対するコメント」(4月13日付)が公開されましたので,複数の篤志の研究者からも意見を頂きつつ、回答の内容について検討しました。その結果,問題点3、問題点4に関して重要な問題が未だ残されていると判断しましたので、再度コメントを公開します。

 

問題点3 佐藤氏は、例えば過去のデータを使って1日または短期間の予測を行い、その結果が観測値に近いことから自分の予測が当たっており、検証も行っていると回答しています。(例えば、4月7日の時点で4月10日の国内の感染者数が5000人になると予測し、実際に9日に5000人に達したことをもって、検証を行っているとしています。)これは、検証の意味を曲解したものです。どのように簡単なモデルでも、あるいは過去の時系列の簡単な連続関数によるフィッティング(関数当てはめ)によっても、直近の未来の予想は可能です。そのことをもって、モデルが正しいと主張することはできません。爆発を抑えられるか否かを予測するためには、短期間の予測ではなく、長期の未来を予測することが必要です。佐藤氏はそのような基本的検証を行っていないと思われます(この基本的検証は、中国、韓国などのデータを用いて行うことができるはずです。)

 

問題点4 佐藤氏は回答の中で、生命の危険にかかわることなので、回復率などのパラメータをできるだけ小さく取ることで最悪の場合を予想すべきと述べています。しかし、この回答より以前に、予測が佐藤氏の考える最悪の場合を想定していることをWeb上の予測グラフに添えて、あるいはマスコミへの説明でも明確に行っていたのでしょうか? そのような事実は私たちには見つけることができませんでした。佐藤氏が求めた必要な接触削減率が極めて大きな値となっているのが、佐藤氏の考える最悪条件に由来している以上,この点の明確な説明は客観性が求められる科学的予測として不可欠です。予測を社会に提示する際には、情報を受け取る側がリスク評価を主体的に活用できるよう、科学者は,そのモデルの適用条件と適用範囲、予測結果の根拠や不確実性について客観性を持って社会に伝える必要があります。このような科学者の行動規範を理解して頂きたいと願います。

 

2020年4月18日

本堂  毅(東北大学理学研究科准教授、科学技術社会論)

佐野雅己(東京大学名誉教授、東京大学国際高等研究所東京カレッジ特任教授、統計物理学)

松下 貢(中央大学名誉教授、統計物理学)